業務システムで浮いた月20時間はどこへ消えたのか|人件費削減で投資対効果を計算すると外れる理由と、下期予算での積み方

業務システム投資対効果予算編成

導入時の稟議には、たいてい削減時間が書いてあります。「1日1時間、月20時間の入力作業がなくなります」。稼働から半年、たしかに入力は速くなりました。それでも人件費の欄は去年と同じです。効果が出ていないのではなく、効果を数える場所がずれている可能性があります。

月20時間が浮いても、給与総額が動かないことがあります

稟議の効果額と支払額

時給1,800円の担当者3名で月20時間ずつ削減できるとして稟議を書いたとします。20時間×3名×1,800円で月10.8万円、年間で約130万円です。投資額が400万円なら3年ちょっとで回収、という絵になります。

ところが、この計算が現金の動きと一致するのは、削った20時間が残業だった場合だけです。所定内の8時間の中で作業が速くなったのであれば、支払う給与は1円も変わりません。仕事の中身が入れ替わっただけだからです。月次の締めの遅れを待ち時間と作業時間に分けた記事と同じで、時間は分解しないと行き先が分かりません。

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同じ構造は、生成AIの導入効果にもそのまま当てはまります。「AIで年間1,200時間削減」と報告が上がっても、残業代が減っていなければ現金は動いていません。数え直すときにどの数字を見るかは「AIで年間1,200時間削減」と報告が上がったのに残業が減っていませんに書きました。

浮いた時間の行き先は、給与明細のどこに出るかで決まります

浮いた時間の行き先

  • 残業が減った場合は、割増賃金の分だけ支払額が減ります。労働基準法第37条は時間外労働に2割5分以上、1か月60時間を超える部分に5割以上の割増賃金を定めています。
  • 所定内の別作業に回った場合は、支払額は変わりません。増えた仕事の側で効果を書くことになります。
  • 繁忙期のピークだけ下がった場合は、年間平均では見えにくくなります。
  • 欠員を補充せずに済んだ場合は、翌期の採用費と給与で効果が出ます。

補助金や税制が見ているのは、人件費を引いた後の額ではありません

社内の計算と制度の計算がずれるのは、ここです。中小企業庁の経営力向上計画をはじめ、補助金や税制の要件で使われる労働生産性は、次のように定義されています。

労働生産性 =(営業利益 + 人件費 + 減価償却費)÷(従業員数 × 1人当たり年間就業時間)

人件費を100万円削減した場合
  営業利益     +100万円
  人件費       -100万円
  分子の合計     変わりません

総労働時間が年1,000時間減った場合
  分母が小さくなり、労働生産性が上がります

分子に人件費が足し戻されている点が要点です。人件費を100万円削れば営業利益が同額増えますので、分子は動きません。制度上の指標が上がるのは、総労働時間が減ったときか、粗利が増えたときです。減価償却費も分子に足し戻されますので、資産に計上して償却する場合と、クラウド利用料として毎月費用処理する場合とで指標の見え方が変わります。処理の分かれ方は期末にシステムを発注しても今期の経費にならない話にまとめています。なお、経営力向上計画では計画期間に応じた伸び率(3年計画で1%以上など)が求められますが、率も対象も年度の改正で変わりますので、申請前に当該年度の基本方針と公募要領で確認してください。

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社内の計算と制度の計算を、同じ表に並べます

社内の計算と制度の計算

項目 社内でよく使う投資対効果 補助金・税制が使う労働生産性
効果の中身 削減できた人件費の額 労働生産性の伸び率
分子 削減時間 × 時給 営業利益+人件費+減価償却費
分母 投資額 従業員数 × 1人当たり年間就業時間
人件費を下げたときの動き 効果額の増加 変化なし
総労働時間が減ったときの動き 効果額の増加 指標の上昇
クラウド利用料が増えたときの動き 効果額の減少 分子の減少
見る期間 単年度 3〜5年の計画期間

人員を減らさない前提の会社であれば、社内向けの資料でも「削減した人件費」ではなく「減った総労働時間」と「その時間で増えた仕事」で書くほうが、翌期に検証できます。

下期の予算には、現金が動く分と動かない分を分けて積みます

下期予算への積み方

効果額を1本にまとめると、翌期に「効果が出ていない」と言われて終わります。次のように分けて添付しておくと、どこが未達なのかが後から追えます。

下期予算 添付資料|効果の内訳

A 残業の削減       20h × 3名 × 割増込み2,250円 = 月135,000円 → 人件費予算を減額します
B 所定内の振替     20h × 2名                   = 金額換算しません → 受注件数で示します
C 欠員の不補充     1名分の採用見送り            = 採用計画と連動させます
D 外注・派遣の解除  月40h分の委託解除            = 契約解除日から反映します

投資額    初期 400万円 + 年間保守 60万円 × 5年 = 700万円
判断基準  Aだけで回収できるか、B〜Dの達成条件を書けるか

Aは支出が実際に減りますので、人件費の予算を減額して構いません。B〜Dは支出が減る保証がありませんので、金額を足し込まずに別の指標で書きます。回収年数を出すときは初期費用だけでなく毎年の保守費を含めてください。何にいくら払っているかは保守費が何の対価なのかを整理した記事を確認いただくと切り分けやすくなります。

えらびの道では、卸売の受発注や請求、出張販売の管理、介護のシフト管理などの業務システムをオーダーメイドで開発しています。効果測定については、作業の開始と終了の記録がシステム側に残る設計にしておくことで、導入前後の作業時間を後から集計できるようにしています。データの可視化やレポートの自動化、需要予測のような機械学習にも対応しており、まず小さく作って動かしながら育てる進め方をとっています。効果の数え方を先に決めてから作ると、稟議の書き直しが減ります。

効果の数え方と下期予算への積み方まで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DX支援を本業としています。卸売の受発注・請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データの収集と予測基盤を手がけてきました。稟議に効果額を書く側と、稼働後に実績を聞かれる側の両方に立ってきました。

この記事で扱った削減時間の行き先も、御社の業務に合わせて分けるお手伝いができます。受発注の入力や月次の締めのどこで時間が浮いたのかを、残業が減った分と所定内の別作業に回った分に切り分けます。処理件数や作業時刻をシステムから取り出せるようにしておけば、効果は後から数えられます。

補助金や税制についても、制度が使う労働生産性の式に合わせて数字を並べる作業をお手伝いします。営業利益・人件費・減価償却費と総労働時間のどこが動くのかを、社内の投資対効果とは別の欄として整理します。伸び率や対象は年度ごとに変わりますので、申請前に当該年度の基本方針と公募要領で確認したうえでお話しします。

まずは、稟議に書いた削減時間が今どこに出ているかを見るところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。

よくある質問

業務システムの投資対効果はどう計算すればいいですか?

削減時間に時給を掛けるだけでは、実際の支出と合わないことがあります。残業や外注のように現金が減る分と、所定内の作業が入れ替わるだけの分を分けて計算し、後者は金額ではなく件数や日数で示すほうが、翌期に検証しやすくなります。

人件費が減らないなら、業務システムを入れる意味はないのでしょうか?

同じ人数で処理できる件数が増えたり、締めが早まって判断が前倒しになったりする効果は残ります。制度側の労働生産性も人件費の削減では動かず、総労働時間の減少と粗利の増加で上がる仕組みですので、そちらを目標に置くほうが実態に合います。

補助金の申請で使う労働生産性は、社内の計算と同じでよいですか?

同じにはなりません。制度側は営業利益に人件費と減価償却費を足し戻した額を、従業員数と年間就業時間で割って求めます。定義も求められる伸び率も年度の改正で変わりますので、申請する年度の基本方針と公募要領で必ず確認してください。

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この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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