
1月施行の取適法に、いまの発注書と支払データで答えられますか|製造と運送を外注する金属加工会社が年内に直した発注記録と支払期日の数え方
この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。
2026年1月1日に、下請法は「中小受託取引適正化法(取適法)」へ変わりました。名前が変わっただけと受け止めて、発注と支払いの実務をそのままにしている会社は少なくありません。施行から8か月が過ぎたいま、いまの発注書と支払データで説明できる状態になっているかを、ある会社の動きで追います。
「うちは関係ない」と考えていた会社が、外注23社のうち14社で対象になりました
大分県内で産業機械の部品を加工している、従業員62名・資本金3,000万円の会社です。大企業ではないので下請法は自社に関係ないと考えていましたが、昨年11月に取引先から改正の案内が届き、自社が発注する側でも対象になると気づきました。資本金1,000万円超3億円以下の会社が資本金1,000万円以下の相手に製造を委託すれば、以前から対象です。
そこへ改正で範囲が広がりました。中小企業庁の中小受託取引適正化法のページにあるとおり、発荷主が運送事業者へ物品の運送を委託する取引が新たに加わり、資本金基準に加えて従業員300人(役務提供委託等は100人)の基準も追加されています。
今年3月に外注先23社を委託の種類と資本金で仕分けたところ、製造委託が11社、完成品を客先へ運ぶ運送委託が3社の、合計14社が対象と分かりました。
月180件の発注のうち、41件は記録が残っていませんでした
次に発注の実態を数えました。月およそ180件のうち、注文書を出していたのは139件です。残る41件は「明日までに5個だけ追加で」といった特急分で、電話とメールだけで動いていました。金額は後から届く請求書に合わせていたため、いくらで頼んだのかを示す記録がどこにも残っていません。
改正では、協議に応じない一方的な代金決定が禁止されました。金額を決めずに頼み、あとから請求額を調整する運用は、この点で説明が難しくなります。一方で発注記録の出し方は楽になり、公正取引委員会の取適法の解説ページのとおり、電磁的方法での提供に相手の承諾が要らなくなりました。メールやPDFで足ります。
ただし項目が欠けたメールは記録になりません。この会社は発注メールの定型文を作り直しました。
発注メールに必ず入れる欄として社内で決めた項目
1. 発注番号(採番して受領・請求・支払まで同じ番号を使います)
2. 委託した日(電話で頼んだ日です。請求書の日付ではありません)
3. 品名・図番・工程・数量
4. 受け取る期日と場所
5. 検査をする場合は、その完了期日
6. 代金の額(決められない場合は算定方法と、確定させる予定日)
7. 支払期日と支払方法
電話で頼んだ追加分に誰がどこまで金額を約束してよいかは、承認ワークフローの前に決めた金額基準と代理承認の話と同じ整理が必要になりました。
支払データを1年分抜いたら、受領日から72日目に払っていた取引がありました
5月に、販売管理システムから受領日と支払予定日を1年分抜き出しました。支払条件が3種類混在していて、そのうち月末締め・翌々月10日払いが6社ありました。
| 支払条件 | 7月1日に受け取った分の支払日 | 受領日から数えた日数 | 見直しの要否 |
|---|---|---|---|
| 月末締め・翌々月10日払い | 9月10日 | 72日 | 必要 |
| 検収日から60日払い(検収まで平均9日) | 9月8日 | 70日 | 必要 |
| 月末締め・翌月末払い | 8月31日 | 62日 | 不要 |
| 納品月の翌月20日払い | 8月20日 | 51日 | 不要 |
公正取引委員会のよくある質問コーナー(取適法)では、7月1日に受領して9月10日に支払う制度は60日を超えるため変更が必要とされ、翌月末支払への変更が例に挙げられています。あわせて、60日以内は2か月以内として運用され、大の月も小の月も同じ1か月として数えるとされています。表の翌月末払いが62日でも見直し不要なのは、この運用によります。
もうひとつ問題だったのが起点です。この会社は支払システムの起算日を「検収完了日」に設定していました。数えるべきは受け取った日です。検収が遅れた月だけ支払日が後ろへずれる作りになっていました。
-- 受領日から支払予定日までが60日を超えた明細を出します
SELECT s.vendor_code, s.vendor_name, r.received_date, p.scheduled_pay_date,
DATEDIFF(p.scheduled_pay_date, r.received_date) + 1 AS days_from_receipt
FROM receipts r
JOIN subcontractors s ON s.vendor_code = r.vendor_code
JOIN payment_plans p ON p.receipt_id = r.id
WHERE s.toriteki_target = 1
AND DATEDIFF(p.scheduled_pay_date, r.received_date) + 1 > 60
ORDER BY days_from_receipt DESC;
抽出した明細を振込データとどう突き合わせるかは、請求書と支払通知の突き合わせから総合振込までの話で触れた流れと重なります。
手形をやめた2社の分だけ、資金繰りの谷が1か月早く来ました
改正で手形払いは禁止され、電子記録債権やファクタリングでも支払期日までに満額の現金を得ることが難しい手段は使えなくなりました。この会社は120日サイトの約束手形を2社に振り出していて、月平均で380万円ほどありました。1月から現金振込へ切り替えています。
現金化が早まった分、資金の出方が変わりました。1月から4月までは、期日が来る手形の決済と新しい現金払いが重なり、月あたり最大380万円の上乗せになりました。ここは制度対応そのものより先に効くところで、資金繰り表を月次から週次に切り替えて凌いでいます。
年内に残した作業は、外注先マスタと発注番号の2つです
8月時点で残っているのは、記録をつなぐ側の作業です。外注先マスタに「取適法の対象かどうか」「委託の種類(製造か特定運送か)」「支払条件」の3項目を追加しました。取引先の属性を人の記憶ではなくデータとして持つ考え方は、取引先区分を会計・購買データでどう持つかの話と同じです。
そのうえで、発注番号を採番して発注メール・受領・請求・支払を1本の線でつなぎます。10月中に対象14社へ支払条件の変更を通知し、12月の支払分から新しい条件で回す予定です。
こうした対応は、法律の条文を読むところより、いま自社のデータがどう入っているかを数えるところで詰まります。えらびの道では、卸売の受発注・請求や介護のシフト管理などの業務システムをオーダーメイドで開発しています。既存システムから受領日と支払日を抜き出して60日超の明細を洗い出す作業や、外注先マスタへの区分追加、発注番号で受領・請求・支払をつなぐ改修は、いずれも小さく作って動かしながら広げられる範囲です。制度そのものの判断は公正取引委員会や中小企業庁の資料と専門家の確認が要りますが、判断の材料になる数字を出すところはお手伝いできます。
発注書と支払期日の整備まで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DX支援を手がけています。卸売の受発注と請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データの収集と予測基盤といった領域で、実際に動くシステムを作ってきました。制度解説を書くだけの立場ではなく、日々の伝票と支払データを扱う現場から関わっています。
この記事で扱ったような、発注書のない特急分の記録化や、支払期日の数え直しについてもお手伝いできます。発注番号を受領・請求・支払まで通して持たせる仕組み、必須項目が欠けたまま送信されない発注メールやフォーム、販売管理システムから受領日と支払予定日を抜き出して受領日起算の日数を確認する集計など、御社の取引の実態に合わせて組み立てます。
進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務、たとえば対象となる外注先への発注記録から先に動かして、残りは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、現場で聞いた話がそのまま設計に反映されます。
自社の取引が対象になるのか、いまの支払条件のどこを直せばよいのか、といった段階のご相談でも構いません。えらびの道ではオンラインで30分のご相談をお受けしており、費用はかかりません。手元の発注書や支払データを見ながら、どこから手をつけられるかを一緒に整理します。
よくある質問
下請法が取適法に変わると、中小企業でも発注側として対象になりますか?
なります。資本金1,000万円超3億円以下の会社が資本金1,000万円以下の相手に製造を委託する場合は以前から対象で、改正でこれに運送の委託と従業員数の基準が加わりました。自社の規模ではなく、相手と委託内容の組み合わせで決まります。
発注書はメールやPDFで送っても大丈夫ですか?
大丈夫です。改正により、電磁的方法での提供に相手の承諾が要らなくなりました。ただし品名や数量、代金の額、支払期日といった項目が欠けていると記録として足りません。定型の様式を決めて、そこから外れた依頼が出ない形にしておくと安全です。
支払期日の60日は、検収日から数えてもよいのでしょうか?
数える起点は品物を受け取った日です。検収完了日や請求書の到着日ではありません。支払システムの起算日が検収日になっていると、検収が遅れた月だけ超過するため、まず自社の設定がどちらになっているかを確認してください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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