
契約書に押している収入印紙は年間いくらになるのか|紙の原本を求める取引先がいる中で、電子契約へ先に切り替える書類の決め方
印紙税は契約の中身ではなく、紙の文書を作ったことに課されます
収入印紙を貼っているのは、契約を結んだからではありません。印紙税は課税文書を「作成」したことに課される税で、紙の文書を作って相手に渡した時点で納税義務が生じます。同じ内容の契約でも、電子データのまま締結して交付する形であれば、紙の課税文書を作成したことにならないため印紙は不要になります。電子契約が印紙代とセットで語られるのは、この一点によります。
裏を返すと、電子で締結したあとに「念のため」と紙に印刷して署名や押印をし直せば、そこで課税文書が生まれます。電子化したつもりで印紙代が丸ごと残っている会社は、たいていこの二重運用が原因です。
年間の印紙代は、文書の号数ごとに数えると出ます
印紙税額は文書の種類(号数)ごとに決まっています。契約書のファイルを数えるより、経理の租税公課から印紙の購入額を拾い、号数別に割り戻すほうが早く出ます。
| 文書の号数 | 貼っている書類 | 1通あたりの印紙税額 | 年間の本数が増える理由 |
|---|---|---|---|
| 第2号文書(請負) | 工事請負契約書、注文請書、業務委託の個別契約書 | 記載金額で決まります(100万円超200万円以下は400円、300万円超500万円以下は2,000円です) | 案件ごとに1通ずつ発生するためです |
| 第7号文書(継続的取引の基本となる契約書) | 取引基本契約書、業務委託基本契約書 | 4,000円です | 取引先を増やすたびに1通ずつ増えるためです |
| 第17号文書(受取書) | 領収書、入金の受取書 | 記載金額で決まります(5万円未満は非課税、100万円以下は200円です) | 現金や手形での回収がある月に集中するためです |
号数別の税額は国税庁の印紙税額の一覧表(その1)と(その2)に載っています。建設工事の請負契約書と不動産の譲渡契約書には軽減措置があり、適用期限は延長を重ねています。税額表も非課税の範囲も改正で変わりますので、試算の前に年度ごとの最新版を確認してください。
注文請書が月20通あり、記載金額が300万円超500万円以下に多く収まる会社なら、1通2,000円で年48万円になります。そこへ取引基本契約書が年10通で4万円、領収書が年300通で6万円ほど乗り、合計は60万円近くになります。契約データを持っているなら、集計はこの程度で済みます。
-- 紙で交付した書類だけを号数別に数える
SELECT
doc_class, -- '2号(請負)' '7号(基本契約)' '17号(受取書)'
COUNT(*) AS docs,
SUM(stamp_tax_yen) AS stamp_total
FROM contract_documents
WHERE issued_on BETWEEN '2025-04-01' AND '2026-03-31'
AND media = 'paper'
GROUP BY doc_class
ORDER BY stamp_total DESC;
紙でなければ結べない契約は、思っているより少なくなっています
建設工事の請負契約は、建設業法第19条第3項により相手方の承諾を得れば電磁的方法で締結できます。下請法第3条の書面も、相手方の承諾があれば電子で提供できます。労働条件の明示は本人が希望した場合に電子メール等で行えますし、定期借地や定期借家の契約書と事前説明の書面も、法改正によって電磁的方法が認められています。
一方で、事業用定期借地権の設定契約や任意後見契約のように公正証書が要るものは、紙が残ります。ただし、これらは多くの会社で年に数通あるかどうかです。
条文を並べると分かるのは、電子にできるかどうかではなく、相手方の承諾を取れるかどうかが分かれ目になっているということです。承諾の要件も改正で変わりますので、自社に多い契約類型については所管省庁の最新の案内を確認してください。
取引先が原本を求める理由は、証拠力と社内規程に分かれます
「紙の原本でお願いします」と言われたとき、中身は3つの別の心配が混ざっています。
1つ目は証拠力の心配です。電子署名及び認証業務に関する法律第3条により、本人による一定の電子署名がある電磁的記録は真正に成立したものと推定されます。どの署名方式がこれに当たるかは、使うサービスの仕様で変わります。
2つ目は相手の社内規程です。決裁規程が押印を前提に書かれている場合、こちらが説明しても動きません。相手の規程改定を待つ話であって、証拠力の議論ではありません。
3つ目は提出先の都合です。監査や金融機関に見せるだけなら、電子契約書を印刷して出せば足ります。原本性は提出物ではなく保存側の要件です。
実際に切り分けると、残るのは2つ目だけということが多くなります。なお自社側でも、電子契約を入れると誰がどの金額まで締結できるかを先に決める必要が出ますので、金額基準と代理承認の整理は同じタイミングで手を付けたほうが早く進みます。
切り替える順番は、印紙代の大きさではなく本数で決まります
1通4,000円の基本契約書は目立ちますが、年10通なら4万円です。1通2,000円でも年240通あれば48万円になります。効くのは単価ではなく本数です。
| 書類の種類 | 年間の本数の目安 | 相手の承諾が要るかどうか | 切り替えの順番 |
|---|---|---|---|
| 領収書(第17号) | 200〜600通です | 要りません | 最初に切り替えます |
| 注文請書・個別契約(第2号) | 50〜300通です | 要ります | 次に切り替えます |
| 取引基本契約(第7号) | 5〜30通です | 要ります | 更新月に合わせて切り替えます |
| 官公庁・大手企業との契約 | 数通です | 要ります | 当面は紙のまま残します |
領収書は相手の承諾が要らないうえ、入金を振込に寄せて消込を仕組みで回すようにすると、発行そのものが減ります。ここが一番早く効きます。
締結後は保存の話になります。電子で受け取った契約書は電子取引データですので、取引年月日・金額・取引先で検索できる状態を用意しておく必要があります。ここを後回しにすると、印紙代は減ったのに探せない契約書が増えることになります。
自社で実装するときに手伝えること
えらびの道では、卸売の受発注・請求、出張販売の管理、介護のシフト管理、ECサイトなどの業務システムをオーダーメイドで開発しています。今回のテーマでいえば、契約書の号数と印紙額を伝票側に持たせて年間額を集計できるようにするところ、注文請書や領収書を電子で発行して電子契約サービスへ渡すところ、締結済みの契約書を取引年月日・金額・取引先で引ける形で保存するところが実装の範囲です。データの可視化やレポートの自動化、機械学習による予測、リアルタイムなデータ収集基盤も扱っています。全部を一度に置き換えず、本数の多い書類から電子へ寄せ、紙が残る契約は紙のまま並走させる進め方をとっています。
印紙代の棚卸しから電子契約への移行まで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DX支援を行っています。卸売の受発注・請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データの収集と予測基盤といった領域で、実際に手を動かして仕組みを作ってきました。制度の解説だけでなく、日々の業務が回る形まで落とし込むところが本業です。
この記事で扱った印紙代の号数別集計も、御社の契約データや経理の租税公課の形に合わせて組み立てられます。注文請書や取引基本契約書が年に何通発生しているのか、記載金額の帯ごとにどこへ印紙代が集中しているのかを、既存の販売管理や会計のデータから拾い出す仕組みを作ります。紙と電子のどちらで交付したかを書類ごとに記録し、二重運用が残っていないかを後から確認できる形にすることもできます。
進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。取引先の承諾が取りやすく、通数の多い書類から電子契約へ移し、紙の原本を求める取引先が残る書類は様子を見ながら順に移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、現場の事情を伝え直す手間もかかりません。
自社の契約書のうち、どれから切り替えるとよいか迷っている段階でも構いません。えらびの道ではオンラインで30分の相談をお受けしており、費用はかかりません。現状の書類の流れを伺うところからご一緒します。
よくある質問
電子契約にすると収入印紙は本当に不要になりますか?
印紙税は紙の課税文書を作成したことに課されるため、電子データのまま締結して交付する形であれば印紙は不要になります。ただし電子で締結した後に紙へ印刷して署名や押印をし直すと課税文書が生まれますので、二重運用を残さないことが前提になります。
契約書の印紙代は年間でどのくらいになりますか?
文書の号数と本数で決まります。注文請書が月20通あり記載金額が300万円超500万円以下に多く収まる会社なら、それだけで年48万円ほどです。まずは経理の租税公課から印紙の購入額を拾い、号数別に割り戻して自社の実額を出してください。
取引先が紙の契約書しか受け付けない場合はどうすればよいですか?
理由を分けて確かめてください。証拠力の心配であれば電子署名法の推定効を説明できますし、提出先の都合なら印刷して渡せば足ります。相手の決裁規程が押印前提で書かれている場合だけは待つしかありませんので、その取引先は紙のまま残し、他の書類から切り替えます。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
あわせて読みたい
kintoneのアプリが増えすぎて受注から請求までの数字が合わない|来年度予算の前に、ノーコードで続ける業務と作り直す業務を分ける手順
kintoneのアプリが増え、受注・出荷・請求の数字がつながらなくなった会社向けに、転記箇所の洗い出しから、作り直す範囲の決め方、予算化までの手順を解説します。
大分で業務システムを頼める開発会社が見つからない|県外の会社にオンラインで発注する前に、現地訪問の回数・現場の見せ方・駆けつけが要る障害の範囲を来年度予算の前に決める【Q&A】
大分で業務システムの発注先が見つからず県外の会社にオンラインで頼むとき、現地訪問の回数、現場業務の見せ方、駆けつけが要る障害の範囲を、来年度予算に載せる前に決める方法をQ&Aで整理します。
Accessの販売管理が共有フォルダで月に1度壊れる|Office 2021のサポートが切れる10月13日を前に、Microsoft 365版で延命するかWebへ作り直すかを決めた卸売会社の3か月
Office 2021のサポートは2026年10月13日に終わります。共有フォルダに置いたAccessの販売管理が月に1度壊れる卸売会社を想定し、中身を数えるところから延命と作り直しの範囲を決めるまでを追います。


