
在庫表には数があるのに部品が足りない|受注引当と発注点を年末年始の休業前に決める手順
在庫表を開くと、部品Aは120個あることになっています。ところが組立の前日に現場から「足りません」と連絡が来ます。数えてみると実際に棚には120個あって、在庫表は間違っていません。間違っていたのは、その120個が「まだ誰のものでもない」と考えていたことのほうです。
在庫数が合っているのに足りなくなる理由
在庫表が持っている数は、多くの場合「いま棚にある数」だけです。ここに載っていない情報が二つあります。ひとつは、すでに受注していて来週出す製品のために消える数です。もうひとつは、発注済みでまだ届いていない数です。
部品Aが120個あっても、来週の組立で90個、再来週で50個使うことが決まっていれば、実際に自由に使える数はマイナス20個になります。この差は在庫表を見ても分かりません。営業が納期を回答する画面と、購買が発注点を見る画面が別々になっていると、この20個は誰の目にも入らないまま組立日を迎えます。
年末年始が絡むと、この20個の重さが変わります。仕入先が12月27日から1月5日まで止まる場合、12月中旬に気づいた欠品は年内に埋まりません。11月の時点で納期回答をした案件が、1月の第2週まで動かなくなります。
手順1:在庫の数を4種類に分けて持ちます
最初にやることは、システムの設計ではなく、数の定義を分けることです。ひとつの「在庫数」という列を、次の4つに分解します。
| 持つ数 | 何を表す数か | どこから増える数か |
|---|---|---|
| 実在庫数 | いま棚に物理的にある数 | 入庫を計上した時点で増える数 |
| 引当数 | 受注や製造指示で予約済みの数 | 受注を確定した時点で増える数 |
| 発注残数 | 発注済みで未入荷の数 | 発注書を出した時点で増える数 |
| 有効在庫数 | 新しい注文に回せる数 | 実在庫-引当+発注残で計算する数 |
現場が見るべきは有効在庫数です。この列がないまま実在庫数だけを見ていると、必ず二重に約束します。Excelでも作れますが、受注・発注・入出庫の3か所を同じタイミングで直す必要があるため、手作業では持ちません。9月末の棚卸しで在庫が合わない話でも触れたとおり、数を合わせる前に、何を数えるかを決めるのが先です。
手順2:引当をどの時点で立てるか決めます
引当は「いつ立てるか」で性格が変わります。ここを決めないままシステムを作ると、営業が見積を出した時点で在庫が押さえられてしまい、失注しても解放されないまま在庫が枯れます。
決めるのは次の3点です。第一に、引当の起点をどこにするかです。見積時点か、受注確定時点か、製造指示を出した時点かの3択になります。多くの製造業では受注確定時点が現実的です。第二に、引当を解放する条件です。出荷完了で消すのか、失注登録で戻すのか、一定日数を過ぎたら自動で外すのかを決めます。第三に、引当の優先順位です。同じ部品を複数の受注が取り合ったとき、納期の早い順にするのか、金額の大きい順にするのかで、現場の判断が変わります。
社内で議論が空回りするときは、いま起きている欠品の履歴を並べて整理すると早いです。次のような指示で、過去の欠品ログを分類してみてください。
以下は過去6か月の欠品発生リストです。各行について
「(A)実在庫の記録ミス」「(B)引当が無くて二重に約束した」
「(C)発注のタイミングが遅れた」「(D)仕入先の遅延」
のどれに当たるかを分類し、件数の多い順に並べてください。
判断がつかない行は「要確認」として、確認すべき項目も書いてください。
日付 / 品番 / 予定数 / 実際に足りなかった数 / 気づいた工程 / 対応
2026-03-12 / P-1180 / 90 / 20 / 組立前日 / 他案件から流用
(以下、実データを貼り付け)
分類の結果が(B)に寄っていれば引当の設計が要ります。(C)に寄っていれば次の発注点の話になります。
手順3:発注点を「日数」で置き換えます
発注点を個数で決めている会社は多いのですが、個数だけでは休業期間に対応できません。発注点は次の式で考えます。
発注点 = 1日あたりの平均使用数 × 調達リードタイム日数 + 安全在庫
このリードタイム日数を、仕入先の稼働日ではなく暦日で持つことがポイントです。通常期のリードタイムが10日の部品でも、12月27日から1月5日まで仕入先が休むなら、その期間をまたぐ発注の実質リードタイムは20日近くになります。
年末年始の休業日は仕入先ごとに違います。カレンダーを部品マスタではなく仕入先マスタに持たせて、リードタイム計算のときに休業日を飛ばす形にすると、12月の発注点だけ自動的に持ち上がります。ここまで作り込まず、11月末に一度だけ手で発注点を1.5倍にする運用でも、当面はしのげます。どこまで自動にするかは、対象部品が20点なのか200点なのかで判断が変わります。
なお、経済産業省の「2026年年末年始休暇に関する要請」のような通知が出る年もありますが、実務では取引先ごとの休業日を個別に確認するほかありません。10月中に主要な仕入先へ休業予定を照会し、集めた回答をそのままマスタに入れる段取りにしておくと、11月の納期回答が楽になります。
手順4:納期回答の画面に有効在庫を出します
最後の段階は、営業が納期を答える瞬間に有効在庫が見えている状態を作ることです。ここまでの3段階を整えても、営業が別のExcelを見ていれば同じことが起きます。
回答に必要なのは在庫数そのものではなく、「この数量をこの日までに出せるか」の可否です。品番と数量と希望納期を入れると、有効在庫と発注残の入荷予定日から、出荷可能日が返る形にします。休業日をまたぐ場合は、その旨が併記されるようにします。
回答内容をメールに起こす手前で、次のような指示を使うと確認が早くなります。
下記の納期回答案を、社内確認用に整理してください。
・回答日と出荷可能日の間に、仕入先の休業日が何日含まれるか
・在庫引当分と発注残依存分を分けて、それぞれ何個か
・発注残が遅れた場合、出荷可能日が何日ずれるか
リスクが高い行には理由を1行で添えてください。
品番 / 受注数 / 希望納期 / 有効在庫 / 発注残(入荷予定日)
(以下、回答案を貼り付け)
つまずきやすい点
引当を入れた直後に必ず起きるのが、「引当が残ったまま消えない」問題です。失注した案件、数量が減った案件、キャンセルされた案件の引当を戻す導線がないと、半年後には有効在庫が実態よりずっと少なく見えるようになります。月次で引当の棚卸しをする係を決めておいてください。
もうひとつは、共通部品の扱いです。特定の製品にしか使わない部品なら引当は単純ですが、5製品で共用しているネジやコネクタまで受注ごとに引き当てると、運用が破綻します。金額の小さい共通部品は引当の対象から外し、発注点だけで回すほうが現実的です。ABC分析で上位に来る部品だけを引当対象にする、という線引きで十分に効きます。
3つめは、システムを入れる前に入出庫の記録が追いついていないケースです。棚から部品を取ったのに記録が翌日になる状態では、どれだけ精緻な引当ロジックを組んでも数が合いません。この場合は引当より先に、入出庫を発生時点で記録する仕組みが要ります。業務システムが定着せず現場がExcelに戻る理由にあるとおり、入力の手間が現場の許容を超えると記録は止まります。
えらびの道では、卸売業の受発注・在庫管理システムをオーダーメイドで開発してきました。今回のような有効在庫の計算、引当の解放ルール、仕入先ごとの休業カレンダーを持つ発注点の設計は、いずれも既存の販売管理システムを入れ替えずに、その周辺に小さく作って足していける部分です。既存システムからのCSV出力を受けて有効在庫の画面だけ先に作り、動かしながら引当の条件を詰めていく進め方も取れます。過去の欠品データから使用量の変動を見て、安全在庫の水準を検討することもできます。まずは現状の在庫表と欠品の履歴を見せていただければ、どこから手を付けるべきかをお伝えします。
引当と発注点の見直しまで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DX支援を手がけています。卸売の受発注・請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データの収集と予測基盤を作ってきました。机上の知識ではなく、実際に手を動かす立場から現場のことをお伝えしています。
この記事で扱った引当と発注点も、御社の品目と取引条件に合わせて組み立てられます。実在庫数・引当数・発注残数・有効在庫数を分けて持つ設計、受注確定で引当を立てて出荷や失注で解放する仕組み、営業の納期回答画面に有効在庫数を出すところまで作れます。仕入先ごとのリードタイムから発注点を日数で置き直す部分も同様です。
進め方は、全部を一度に置き換えない形をとっています。今回であれば欠品の多い部品の引当から動かし、残りは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、現場で伺った話がそのまま設計に入ります。
いま欠品が起きている品番と、手元の在庫表を見せていただくところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分のご相談をお受けしており、費用はかかりません。年末年始の休業前に何から決めるとよいかも、その場でお話しできます。
よくある質問
有効在庫の計算は市販の販売管理ソフトにありませんか?
多くの製品に引当機能はありますが、引当をいつ立てていつ解放するかは自社の運用に合わせて設定する必要があります。共通部品を対象外にする、仕入先ごとの休業日をリードタイムに反映するといった調整は、標準機能だけでは足りないことが多く、追加開発や周辺ツールで補うことになります。
発注点の設定はどのくらいの部品数から仕組み化すべきですか?
部品数よりも、欠品が起きたときの影響で判断してください。20点程度でも組立が止まる部品ならExcelでは危ないですし、200点あっても代替が効くなら手運用で回せます。まずはABC分析で上位2割を洗い出し、その範囲だけ発注点を仕組みに載せるところから始めるのが現実的です。
年末年始の納期回答は、いつまでに準備を始めればよいですか?
仕入先の休業予定を集める時間を考えると、10月中の着手が目安になります。休業日を確認してリードタイムを引き直し、11月中旬までに12月の発注点を決めておくと、年内最後の発注に間に合います。仕組みが間に合わない場合でも、休業日を一覧にして共有するだけで二重約束はかなり減ります。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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