2027年3月末で紙の約束手形が決済できなくなる|手形帳・裏書・期日管理をやめる会社が、下期の支払条件交渉のうちに決めるでんさいと振込の切り替え範囲

約束手形支払管理業務システム

手形帳は金庫にあって、振り出すのは月に数枚だけです、というお話をよく伺います。ただ、電子交換所での手形・小切手の交換は2027年3月31日で終わります(全国銀行協会の交換廃止時期の決定および明確化について)。その日を過ぎると、手元にある用紙は決済に回せなくなります。下期の支払条件を詰めるのは多くの会社で10月から12月ですので、切り替えを持ち出せる場面はもうそれほど残っていません。

手形帳をやめても、期日を数える仕事は形を変えて残ります

手形の印紙税と電子記録債権

手形をやめて消えるのは、用紙への記入、印紙の貼付、郵送、金庫での保管、取立の依頼です。約束手形の印紙税は記載金額10万円以上100万円以下で200円、1,000万円超2,000万円以下で4,000円です(国税庁のNo.7103 約束手形又は為替手形)。電子記録債権にはこの印紙税がかかりません(全国銀行協会の解説)。

残るのは、支払期日を数える仕事のほうです。でんさいに移しても振込に寄せても、いつ・いくら出ていくかを先に読む必要は変わりません。むしろ手形をやめるとサイトが短くなりますので、資金の山が前へ動きます。「手形帳をやめる」と「期日管理をやめる」は別の話として置いてください。

手順1|支払先を「手形で払っている理由」で4つに分けます

手形で払っている理由

最初にやることは、支払先の一覧を作ることではありません。支払先ごとに、なぜ手形なのかを書き足すことです。理由は実務上4つに分かれます。自社のサイトを延ばして資金繰りを保っている、相手が割引や裏書で早く資金化している、昔からの慣習で続いている、相手の社内ルールで手形指定になっている、の4つです。

この区別がないまま「全部振込にします」と通知すると、2番目の理由の先から反発が出ます。相手にとっては資金化の手段が消えるためです。なお2026年1月1日に施行された取適法では、対象取引での手形の交付が禁止されています(公正取引委員会の取適法・振興法のページ)。対象取引かどうかは支払先マスタに持たせておくと、発注記録と支払期日の数え方の整理とも重なります。

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手順2|でんさいへ移す先と振込へ寄せる先は、サイトの長さで分かれます

切り替えの逆算

分けた理由に、支払額とサイトを重ねて切り替え先を決めます。

支払先の状況 でんさいへ移すのが向く場合 振込へ寄せるのが向く場合
月の支払額が大きい場合 相手が割引や譲渡で資金化している場合 相手が期日に全額入ればよいとしている場合
サイトが90日を超えている場合 サイトを段階的に短くしていく場合 60日以内へ一度に短縮できる場合
年に数回しか取引がない場合 相手が既にでんさいを使っている場合 新しい契約を増やしたくない場合
相手の対応が読めない場合 窓口金融機関が対応している場合 相手が手続きを断った場合

期限は満期のほうから逆算します。

満期が2027年3月31日に収まる最後の振出日(締め日を月末とした場合)
 サイト120日 … 2026年11月末に振り出した分が最後になります
 サイト 90日 … 2026年12月末に振り出した分が最後になります
 サイト 60日 … 2027年 1月末に振り出した分が最後になります
 ※金融機関は手形帳の交付を先に止めますので、実際はこれより早く終わります

でんさいの利用開始には窓口金融機関への申込と審査が必要です(でんさいネットのよくあるご質問)。相手側にも同じ手続きの時間がかかりますので、通知ではなく交渉の議題として9月から11月に出す必要があります。経済産業省も2026年9月2日に約束手形の利用廃止を踏まえた支払の適正化を事業者団体等へ要請していますので、話を切り出す理由としては十分です。

手順3|購買と会計のデータに、支払手段と支払期日の列を先に足します

切り替えの進み具合は、支払先マスタに列を足さないと見えません。交渉の結果が担当者のメモにしか残らないと、11月に「あの先はどうなりましたか」と聞き直すことになります。

支払先マスタに足す項目
 現在の支払手段(1:振込 2:でんさい 3:手形 4:小切手 5:相殺)
 切替後の支払手段 / 切替の適用開始日 / 交渉の状況(未着手・打診済・合意)
 でんさい利用の有無 / 窓口金融機関 / 相手の利用者番号
 現在のサイト(締め日から満期までの日数)/ 切替後のサイト
 手形で払う理由(1:サイト 2:相手の資金化 3:慣習 4:相手の指定)

サイトが短くなる先が増えると、出ていく日が前へ動きます。合意した順に切替後のサイトで支払予定を引き直しておくと、販売と購買のデータから3か月先の入出金を出す仕組みにそのまま乗ります。振込へ寄せた先が増えた分は総合振込のデータが膨らみますので、銀行サイトへの手入力をどこまで減らすかも同じ時期に決めておくと二度手間になりません。

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つまずくのは払う側ではなく、受け取る側と割引でつないでいた資金です

受取側でつまずく点

支払側の切り替えは、交渉さえ済めば止まりません。実際に詰まるのは受取側です。受け取った手形を仕入先へ裏書譲渡して回していた会社は、その回し先も同時に切り替わらないと資金の流れが途切れます。でんさいは必要な額だけ分割して譲渡できますので回り方自体は改善しますが、譲渡先にも利用契約が要ります。

割引で運転資金をつないでいた場合は、でんさい割引の枠を取引銀行と別途詰める必要があります。手形の割引枠がそのまま移るとは限りません。もう一つ見落とされるのが小切手です。手形と同じ日に交換が終わりますので、現金払いの一部を小切手で回している会社は、そちらの支払先も棚卸しの対象に入れてください。受取側が変わると入金の入り方も変わりますので、入金消込の突き合わせの設定も合わせて見直す時期になります。

えらびの道では、卸売の受発注・請求まわりの業務システムをオーダーメイドで開発しています。今回の切り替えについては、支払先マスタへの支払手段・サイト・交渉状況の追加、切替後のサイトで支払予定を引き直す処理、でんさいと振込の支払データを一本の支払予定から作る部分までを担当します。データの可視化やレポートの自動化にも対応しています。全部を作り替えるのではなく、まず交渉の状況が一覧で見える状態を作り、データの受け渡しは合意が進むのに合わせて足していく進め方をとっています。

手形からでんさい・振込への切り替えまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXのご支援をしています。卸売の受発注・請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤づくりを手がけてきました。実際に手を動かして作る立場から、現場で起きていることをお伝えしています。

この記事で扱った手形の切り替えについても、御社の支払先の事情に合わせてお手伝いできます。支払先マスタに支払手段・サイト・交渉状況を持たせる仕組み、合意した先から切替後のサイトで支払予定を引き直す処理、でんさいと振込の支払データを一本の支払予定から作る部分まで、いまお使いの会計ソフトは残したまま、その手前の管理だけを整えるかたちも取れます。

進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務から動かし、残りは様子を見ながら移していきます。手形の切り替えは相手との交渉が進んだ順にしか決まりませんので、この進め方とは相性がよいはずです。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、支払条件の交渉で伺った事情がそのまま設計に入ります。

まずは、どの支払先がどんな理由で手形のままなのかを伺うところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。

よくある質問

約束手形はいつまで使えますか

電子交換所での手形・小切手の交換が2027年3月31日で終わりますので、満期がそれ以降に来る手形は決済できません。サイト90日なら2026年12月末の振出が最後の目安です。金融機関は手形帳の交付をそれより前に止めますので、下期のうちに切り替え先を決めておく必要があります。

でんさいと振込のどちらに切り替えればよいですか

相手が手形を割引や裏書で資金化している場合は、同じことができるでんさいが向きます。期日に全額入ればよいという先や、年に数回しか取引がない先は振込で足ります。でんさいは双方に利用契約が必要ですので、相手の取引銀行が対応しているかを先に確認してください。

受け取っている手形はどうすればよいですか

受取側も同じ期限で決済できなくなりますので、取引先へ支払手段の変更を申し出る立場になります。裏書譲渡で仕入先へ回していた場合は、回し先の切り替えも同時に必要です。割引で運転資金をつないでいた場合は、でんさい割引の枠を取引銀行と早めに詰めておくと安全です。

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