経営ダッシュボードを作ったのに3か月で誰も開かなくなった|会計と合わない売上、月1回の更新、30枚のグラフを下期の経営会議に向けて6枚へ絞り直した経緯

経営ダッシュボードデータ活用BI経営会議

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

従業員60名ほどの卸売会社を例にします。この会社は春に販売管理のデータをBIツールにつなぎました。6月には、売上・粗利・在庫・得意先別の推移など30枚のグラフを並べた経営ダッシュボードを公開しています。公開した週は、役員と部長が延べ40回ほど開いていました。それが9月には週2回まで減っていました。10月半ばに下期最初の経営会議があるため、その前に振り返ったところ、原因は次の4つに分かれました。

ダッシュボードの売上が、会計の月次と合いません

売上の集計定義の違い

公開後最初の経営会議で、ダッシュボードの6月売上が会計の試算表より約180万円多く出ました。ダッシュボードは出荷日で集計した税込金額でした。一方の会計は、計上日で集計した税抜金額に返品と値引を反映していました。会議は「どちらが正しいのか」という議論で終わり、それ以来、経理部長は試算表しか見なくなりました。

この失敗は、グラフを作る前に「売上」の定義を経理とすり合わせていないために起きます。防ぐには、会計の数字を正とします。そのうえでダッシュボード側の集計条件を書き出し、経理に確認してもらいます。

-- ダッシュボードの「売上」を会計と同じ定義にそろえる
SELECT
  DATE_FORMAT(s.posting_date, '%Y-%m') AS month,  -- 出荷日ではなく計上日
  SUM(s.amount_excl_tax)               AS sales   -- 税抜、返品・値引は負の行で含む
FROM sales_lines s
WHERE s.status = 'posted'                  -- 取消・仮伝票を除く
  AND s.slip_type <> 'internal_transfer'   -- 社内振替を除く
GROUP BY month;

定義をそろえても、締めたあとの月を直した伝票が残っていると差が出ます。どこまで遡って直してよいかは、先月締めたはずの売上が月をまたいで変わる問題で整理しています。得意先別に分けると合計が合わない場合は、顧客マスタの重複と表記ゆれも確かめます。

あわせて読みたい取引先別の売上を出したら合計が合わない|顧客マスタの重複と表記ゆれを上期末の集計前に片づける

更新が月1回で、会議の日には3週間前の数字が並んでいます

月1回更新の流れ

データの取り込みは手作業でした。経理担当者が月初に販売管理からCSVを書き出し、BIツールへ上げていました。月次の締めは翌月15日ごろまでかかります。そのため月半ばの会議で見られるのは、確定前の前月の数字か、前々月の数字でした。足りない分は営業部長が口頭で補っていたので、画面を開く理由がなくなっていきました。

すべての数字を「締めが終わってから」更新すると、経営の判断には遅すぎます。そこで受注や出荷のように締めを待たなくてよい数字は、夜間に自動で取り込むことにしました。確定値が必要な粗利だけを月次の更新に分けています。締めそのものが遅い場合は、月次の数字が翌月20日過ぎになる原因を切り分けた記事を参考にしてください。

あわせて読みたい月次の数字が出るのは翌月20日過ぎ|上期末の判断に間に合わせるため、遅れを待ち時間と作業時間に分けた話

30枚のグラフのうち、会議で何かが決まったものがありません

30枚のグラフの実態

30枚は、各部門から「あると便利そうなもの」を集めた結果でした。3か月分の議事録を読み返すと、グラフを見て決まった事項は2件しかありませんでした。しかも2件とも、同じ得意先別粗利のグラフから決まっていました。

グラフが増えるのは、作る段階で「これを見て誰が何を決めるか」を問わないからです。下期に向けては、経営会議で毎回出る問いを先に書き出しました。そのうえで、問いに答えるグラフだけを残しました。

会議で出る問い 残したグラフ 見る人
今月の売上は着地見込みに届くか 受注残を含めた月末着地見込み(日次) 社長
どの得意先で粗利が削られているか 得意先別の粗利率の前月差 営業部長
値上げは浸透しているか 主要30品目の平均販売単価の推移 営業部長
在庫が膨らんでいる品目はどれか 在庫回転日数が60日を超えた品目 購買課長
売掛金の回収は遅れていないか 入金予定日を過ぎた売掛残 経理部長
人件費は粗利に見合っているか 売上総利益に対する人件費の割合 社長

残りの24枚は削除していません。部門ごとの別ページへ移しました。経営会議の画面からは消えますが、探したい人は引き続き見られます。

見る人と見る日を決めないまま公開しています

グラフに付けるカードの項目

公開時の案内は「いつでも見られます」の一文だけでした。誰がいつ見るかを決めていなかったため、数字に異常が出ても気づく人がいませんでした。

そこで、残した6枚それぞれにカードを付けました。カードには、見る人・見る日・動く条件を書いています。

グラフ名  : 得意先別の粗利率の前月差
見る人    : 営業部長
見る日    : 毎週月曜 8:30(営業会議の前)
しきい値  : 前月より3ポイント以上の低下
決めること: 該当する得意先の単価見直しを誰が担当するか

しきい値を超えた得意先が出たら、月曜の営業会議で担当者まで決めることにしました。グラフを何枚にするかを先に考えるより、このカードを書けるかどうかで残すものを選ぶほうが、判断がぶれにくくなります。

えらびの道は業務システムをオーダーメイドで開発しています。これまでに卸売の受発注・請求、出張販売の管理、介護のシフト管理、ECサイトなどを手がけてきました。データの可視化やレポートの自動化から、機械学習による予測、リアルタイムのデータ収集基盤まで対応しています。経営ダッシュボードであれば、経理と一緒に売上の定義を書き出す作業、販売管理からの夜間取り込み、会議で使う数枚に絞った画面づくりをお手伝いできます。最初は数枚から始め、会議での使われ方を見ながら足していく進め方をとっています。

会議で開かれるダッシュボードづくりまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DX支援を本業にしている会社です。卸売の受発注・請求、介護のシフト管理、業務データの収集と予測基盤など、現場で毎日使われる仕組みを自分たちで作ってきました。

この記事で取り上げた作業も、御社のデータと会議の進め方に合わせて組み立てられます。たとえば、売上の集計定義を会計の月次にそろえる作業や、販売管理のデータを夜間に取り込む仕組みです。経営会議で毎回出る問いからグラフを絞り直す作業も含みます。いまのBIツールを生かすか作り直すかも、一緒に判断します。

全部を一度に置き換えないことを大切にしています。まず会議で毎回使う数字から動かし、残りは使われ方を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当するので、経理や営業の方との確認が途中で途切れることもありません。

すでに開かれなくなったダッシュボードがある場合も、これから作る場合もご相談いただけます。オンラインで30分、費用はかかりませんので、えらびの道までお気軽にお声がけください。

よくある質問

経営ダッシュボードのグラフは何枚くらいが適切ですか?

枚数に決まりはありません。経営会議で毎回出る問いの数が目安になります。問いに答えないグラフは会議の画面から外し、部門別のページへ移します。そうすれば、探したい人は見られるまま、会議では見る数字を絞れます。見る人と動く条件を書けないグラフは残さないほうが安全です。

ダッシュボードの売上が会計と合わないのはなぜですか?

多くの場合、集計の定義が違うためです。出荷日か計上日か、税込か税抜か、返品・値引・社内振替を含めるかで金額が変わります。会計の数字を正として集計条件を書き出し、経理に確認してもらいます。そうすると、差が出たときにその理由を説明できるようになります。

ダッシュボードのデータ更新はどのくらいの頻度が必要ですか?

数字の種類ごとに分けるのが現実的です。受注や出荷のように締めを待たなくてよい数字は、夜間に自動で更新します。粗利のように確定値が必要な数字は、月次の締めのあとに更新します。すべてを月1回にそろえると、会議の時点で古い数字が並ぶことになります。

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