
9月末で辞める社員が作ったExcelマクロを誰が引き継ぐのか|中身が読めない自作ツールを作り直すか使い続けるかの判断
「9月末で退職します」という申し出をお盆前後に受け取った会社は少なくありません。困るのは、その人が請求データや在庫表を作るExcelマクロを1人で作り、1人で回してきた場合です。ファイルは共有フォルダにあります。ボタンを押せば動きます。ただ、中で何をしているかを知る人が社内にいません。
業務で作ったマクロは、法律上は会社の著作物です
まず整理しておきたいのが権利の所在です。著作権法第15条第2項では、法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成したプログラムの著作物は、契約や勤務規則に別段の定めがない限り、その法人が著作者になると定められています。プログラムについては、他の著作物と違って法人名義で公表することが条件になっていません。
ですから「自分が作ったので持ち帰ります」「今後も使うなら使用料を」という申し出は、業務時間内に業務のために作られたものであれば、原則として通りません。逆に、私物のパソコンで業務時間外に作った、副業や請負の形で関わっていた、といった事情があるときは、退職前に書面で整理しておく必要があります。
ただし、権利があることと引き継げることは別の話です。手元にファイルがあっても中身が読めなければ動かせないという点は、開発会社を変えたいのにソースコードも仕様書も手元にない状況とまったく同じ構造です。
引き継ぎに使える日数は、退職日までの日数ではありません
8月14日から9月30日までは47日あります。しかし、実際に本人へ質問できる日数はこれよりかなり短くなります。労働基準法第39条では、勤続6年6か月以上の労働者には年20日の年次有給休暇が付与され、時効の範囲で繰り越された分と合わせて相当日数を保有していることがあります。退職前にまとめて消化されると、最終出社日が9月の前半になることも普通に起こります。
一方で、法律上の下限は短く、民法第627条第1項では、期間の定めのない雇用は解約の申入れから2週間で終了します。実務では就業規則で申出時期を定めるのが一般的で、厚生労働省のモデル就業規則にも自己都合退職の申出に関する規定例が示されています。付与日数や申出の期限は法改正や自社の規則で変わりますので、判断の際はその時点の条文と就業規則を確認してください。
逆算の起点は退職日ではなく最終出社日です。あわせて退職者のアカウントが消えないまま残っている状態にならないよう、マクロが置かれた共有フォルダの権限も同じ表で扱ってください。
引き継ぎ資料としてそろえる6項目
コードを読み解く前に、外から見える情報を確定させます。
| 確認する項目 | 引き継ぎ資料に書く中身 | 本人がいなくても分かるか |
|---|---|---|
| 入力元 | 読み込むファイル名・シート名・列の並び | ファイルを開けば分かります |
| 出力先 | 誰に、いつ、どの形式で渡すか | 受け取る側に聞けば分かります |
| 分岐の条件 | 取引先や品目ごとの例外の扱い | 本人に聞かないと分かりません |
| 実行後の手直し | マクロの後に人が上書きしている箇所 | 本人に聞かないと分かりません |
| 実行環境 | 動かす端末・Excelの版・保存場所 | 端末を見れば分かります |
| 止まる条件 | 名前の変更・保存先の移動・行数の上限 | 壊れてから分かることが多いです |
本人に確認できるのは実質2項目です。この2つを聞き出す時間を最優先で確保してください。記録は次の形で残すと、後任が読み返せます。
ツール名:
何のために動かすか:
いつ・誰が動かすか:
入力(どのファイルのどのシートか):
出力(誰に何を渡すか):
例外の扱い(この取引先だけ違う、など):
実行後に手で直している箇所:
去年うまくいかなかったこと:
そもそも何本あるかを把握していない会社も多いので、先に一覧を出しておきます。
Get-ChildItem "\\fileserver\share" -Recurse -Include *.xlsm,*.xlam -ErrorAction SilentlyContinue |
Select-Object FullName, LastWriteTime, Length |
Sort-Object LastWriteTime -Descending |
Export-Csv macro-inventory.csv -NoTypeInformation -Encoding UTF8
使い続ける・凍結する・作り直すで、見る基準が違います
判断を分けるのは、マクロの複雑さではなく、出力した数字がどこまで届くかです。
| 選ぶ道 | 向いている場合 | 退職日までに何を残すか |
|---|---|---|
| そのまま使い続ける | 月1回の実行で、出力を人が必ず検算している場合 | 実行手順の録画と、入力・出力の実例を残します |
| 凍結して延命する | 業務を止められず、当面は仕様を変えない場合 | 動く端末とファイル一式を丸ごと複製して残します |
| 作り直す | 請求・在庫・給与など、数字が社外や決算に出る場合 | 過去3か月分の入力と出力を対にして残します |
延命を選ぶ場合でも、動く環境ごと保全することが前提になります。マクロはOfficeの更新で挙動が変わることがあり、Microsoftもインターネット由来のファイルに含まれるマクロを既定でブロックする仕様を案内しています。「去年まで動いていたから今年も動く」とは限りません。
作り直すと決めた場合、退職前の期間にやるべきことはコードの解読ではありません。8月分と9月分の実データについて、入力ファイルと出力結果を対で保存しておくことです。これがあれば、新しい仕組みが同じ入力から同じ数字を返すかを機械的に比べられます。仕様書がなくても、正解データがあれば検証はできます。なお、作り直しの範囲を広げすぎると現場がExcelに戻る結果になりますので、まずはその1本が担っていた処理だけに絞ってください。
えらびの道は業務システムをオーダーメイドで開発しています。卸売の受発注・請求、出張販売の管理、介護のシフト管理、ECサイトなどを手がけてきました。今回のテーマでいえば、退職前に残した入力と出力の実例をそのまま検証データとして使い、マクロが担っていた集計や帳票の出力を、複数人で使える形に置き換えるところが実装の対象になります。データの可視化やレポートの自動化から予測や収集基盤まで対応しており、全部を一度に置き換えず、月次で一番止まると困る1本から作って動かしながら広げる進め方をとっています。
退職者が作ったExcelマクロの引き継ぎまで、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXの支援を行っています。卸売の受発注や請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤まで、実際に手を動かして作ってきました。
今回のように、退職される方が1人で作って1人で回してきたExcelマクロについても、中身を読み解いて引き継ぎ資料の形に起こすところからお手伝いできます。請求データの集計や在庫表の作成といった、止まると翌月の締めに響く業務から着手し、分岐の条件や実行後の手直しといった本人しか知らない部分を、御社の運用に合わせて書き出します。
えらびの道では、全部を一度に置き換える進め方は取りません。止まると困る1業務だけを先に動かし、残りのマクロは当面そのまま使いながら、様子を見て順に移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、伺った話が途中で薄まることもありません。
最終出社日までの日数が読めない段階でも、何から手をつけるかを整理することはできます。オンラインで30分、費用はかかりませんので、手元のファイルがどんな状態にあるかをお聞かせください。
よくある質問
退職する社員が作ったExcelマクロは会社のものになりますか?
業務時間内に会社の業務のために作られたものであれば、著作権法の職務著作の規定により、契約や勤務規則に別段の定めがない限り会社が著作者になります。ただし私物のパソコンで業務外に作った場合などは事情が異なりますので、退職前に書面で確認しておくと安全です。
マクロの中身が読めない場合、まず何をすればいいですか?
コードを読むより先に、入力ファイルと出力結果を実データのまま保存してください。どのファイルを読み、誰に何を渡しているかが分かれば、後から同じ結果を出す仕組みを作れます。本人にしか分からないのは例外処理と手直しの箇所ですので、そこを優先して聞き取ります。
Excelマクロは業務システムに作り替えたほうがいいですか?
出力した数字が請求書や決算のように社外へ出る場合は、作り替えを検討する価値があります。実行が月1回で、結果を人が必ず検算しているなら、当面は動く環境ごと保全して使い続ける判断も現実的です。作業の複雑さではなく、間違えたときの影響で決めてください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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