10月の価格改定が請求書に反映されない|受注残と継続契約の単価を、どの日付で切り替えるか決めた包装資材卸の記録

販売管理価格改定業務システム

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

大分市の包装資材卸M社(架空・従業員28名、取引先184社、取扱品目およそ1,200点、年商約12億円)は、原材料と物流費の上昇を受けて、2026年10月1日から平均6.8%の価格改定を決めました。7月下旬に案内文を郵送し、「10月1日ご出荷分から」と書いています。ところが10月25日に発行した請求書のうち214行が、その案内と違う単価で印字されていました。

案内文は出荷日で書き、システムは受注日で単価を決めていました

受注から請求までの単価

M社の販売管理システムは、受注を登録した時点で単価マスタから単価を読み、受注明細の欄に書き込みます。請求書はその欄の数字をそのまま集計します。つまりシステムは受注日で単価を決めていました。一方、案内文は出荷日で書かれています。標準品は受注から出荷まで平均9日ですが、特注の袋は4〜6週間かかります。9月に受注して10月に出荷する行は、案内では新単価、システムでは旧単価になります。この食い違いは、10月1日に単価マスタを一括更新した時点では誰にも見えていませんでした。

単価が入っている場所は、3か所ありました

単価が入っている3か所

洗い出すと、単価は商品マスタの標準単価、取引先別の単価表(184社のうち61社に設定)、受注明細に書き込まれた単価の3か所にありました。請求金額を決めているのは3番目だけです。マスタを直しても、すでに立っている受注明細は変わりません。厄介だったのはその逆で、受注を開いて数量を訂正すると、単価がその日のマスタから取り直されて上書きされる仕様でした。9月に出荷を終えた行でも、10月に訂正を1回通せば新単価に化けます。取引先別の単価表が同じ会社に二重に登録されていないかは、取引先マスタの重複と表記ゆれと同じ手順で確かめました。

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10月25日の請求書では、値上げ漏れと過大請求が同時に出ました

請求明細4,120行のうち、案内文と食い違った行は214行でした。

食い違ったケース 行数 影響額 どう直したか
9月に受注して10月に出荷したケース 138行 41万円の不足 11月分の請求書に差額を載せました
8月に受注した特注品を10月に納めたケース 22行 18万円の不足 事情を説明し、旧単価のまま通しました
9月に出荷した後で数量を訂正したケース 54行 12万円の過大 修正した請求書を出し直しました

交付した適格請求書の記載事項に誤りがあったときは、修正したものを相手方に交付する必要があります。方法は国税庁の(交付した適格請求書に誤りがあった場合の対応)に示されています。説明と再発行に、経理2名で3日かかりました。

基準日は、取引の種類ごとに分けました

取引の種類ごとの基準日

一律に出荷日基準へ変えると、注文請書を出してある特注品まで値上げになります。M社は種類ごとに分け、案内文のほうを書き直しました。

・標準品:2026年10月1日以降のご出荷分から新単価
・特注品:2026年9月30日までのご注文分は旧単価
・保守・定額契約:契約書に記載の更新日から新単価
・お見積書をお出ししている案件:有効期限内は見積単価

そのうえで、9月末時点の受注残を1枚の一覧にしました。

受注番号 / 取引先 / 品目 / 区分(標準・特注) / 受注日 / 出荷予定日
受注時の単価 / 10月以降の単価 / 差額 / 見積書の有無と有効期限
案内どおりならどちらの単価か / 実際に請求される単価

最後の2列が違う行だけを見れば、手当てすべき対象が出ます。受注残412行のうち、該当したのは87行でした。

継続契約は、改定日と更新日がずれるところで抜けます

継続契約の更新日の内訳

M社には資材の定期便が19社、パレットのレンタルが7社あり、いずれも月額固定です。契約書には年1回見直すと書いてありますが、更新日は4月が11社、10月が5社、それ以外が10社とばらばらでした。システムは毎月同じ金額の請求データを自動で作る設定で、金額を変える日は担当者の記憶の中にありました。10月から一律に上げれば、4月更新の契約と食い違います。契約マスタに「次回改定日」と「改定後の金額」の2列を足し、その日を含む月から自動で切り替える形に直しました。月の途中に改定日が来る場合は日割りにせず、翌月分から適用すると先に決めています。なお、中小企業庁が9月と3月を価格交渉促進月間としているのは、4月と10月に価格を改定する企業が多いためです。取引先の側も同じ時期に動きます。

8月に手を付けたのは、単価マスタの持ち方でした

来年も同じことが起きないよう、単価を上書きせず「品目・取引先・適用開始日」で行を足す形に変えました。10月単価は9月中旬に先に登録しておき、9月20日締めの請求を旧単価で流して、切り替わらないことを確かめています。この持ち方にすると、過去の請求書をあとから同じ金額で再現できます。取引先からの照会や、請求データの提示を求められた場面で効いてきます。値上げが利益にどう出たかは月次で追うことになりますが、締めが遅ければ11月末まで分かりません。月次が出るまでの遅れを先に縮めておくと、次の改定の判断が早くなります。

えらびの道では、卸売の受発注・請求まわりの業務システムをオーダーメイドで開発しています。価格改定まわりでは、単価に適用開始日を持たせる設計、改定日をまたぐ受注残の抽出、継続契約の次回改定日の管理、切り替えで請求金額がいくら変わるかを事前に試算する画面までを担当します。データの可視化やレポートの自動化にも対応しています。全部を作り替えるのではなく、受注残の一覧を出すところから動かし、改定のたびに使える形へ育てる進め方をとっています。

価格改定を請求書まで通すために、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXのご支援をしています。卸売の受発注や請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤づくりなどを手がけてきました。実際に販売管理の中身を触る立場から、現場で起きていることをお伝えしています。

この記事で扱った単価の切り替えについても、御社の商習慣に合わせたかたちでお手伝いできます。単価がどこに書き込まれているかの洗い出し、受注日と出荷日のどちらで単価が決まるかの確認、標準品・特注品・保守や定額契約といった取引の種類ごとに基準日を分ける整理、改定前の受注残を差額つきで一覧にする作業まで、受発注から請求までひと続きで見ます。

進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務から動かし、残りは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、案内文と請求書の出方がずれないよう、伺った話をそのまま設計に入れられます。

まずは、次の価格改定でどの取引がひっかかりそうかを伺うところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。

よくある質問

値上げの単価は、受注日と出荷日のどちらを基準にすればよいですか

どちらでも構いませんが、取引先への案内文とシステムの設定を同じ基準に揃えることが先になります。在庫から出す標準品は出荷日、注文請書を出す受注生産品は受注日と分けても問題ありません。分けた場合は、その区別を案内文にも書いておきます。

価格改定を反映し損ねた請求書は、どう直せばよいですか

取りすぎていた分は、修正した請求書を相手方に交付します。誤った箇所だけを示す形でも、全項目を書き直した形でも構いません。取りそびれた分は、次月の請求に差額を載せるか、その回は旧単価のまま通すかを、取引先に説明したうえで先に決めておきます。

単価マスタを上書きすると、過去の請求書は再現できなくなりますか

受注明細に単価が書き込まれていれば金額そのものは残りますが、その単価がどのルールで決まったかは追えなくなります。適用開始日を持つ形にしておくと、いつの単価で請求したかを後から説明できます。改定が年1回でも、数年たつと差が出ます。

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