11月にパートから「扶養を超えるので入れません」と言われる|10月の時給改定で上振れした年収見込みを、シフトを組む画面で先に出す

シフト管理給与システム最低賃金

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

大分県内でスーパー向けの惣菜を製造し、直営店を2店舗持つ従業員62名の会社を想定します。うち44名がパートで、多くが配偶者の扶養の範囲で働いています。給与は20日締めの当月末払いです。12月は正月用の詰め合わせが入るため、1年でいちばん人手が要る月になります。

11月6日、4人から同じ申し出がありました

11月に判明した数

11月6日から10日にかけて、製造ラインのパート4名から「このままだと扶養を超えるので、12月のシフトを減らしてほしい」という申し出がありました。うち2名は、盛り付けの工程を1人で回せる主力でした。

総務は1月から10月までの給与実績を1人ずつ拾い直しました。給与ソフトから出せるのは月ごとの支給明細だけで、年の累計はExcelに転記して作ることになります。44名分を並べ終えたのは11月17日で、3日かかりました。その表で、年内に上限へ届きそうな人は申し出のあった4名を含めて9名いると分かりました。

12月のシフトは11月20日に確定させる決まりでしたので、残りは3日です。結局3名をスポットで採用し、盛り付けの手順を教えるために延べ18時間を使いました。

上振れしたのは、10月から12月の3か月分だけでした

Bさんの上振れ内訳

なぜ11月に集中したのかを、あとから1人分たどりました。

Bさんは年明けに「今年は月8万円くらいで、12月は少し余裕が残るはず」と自分で見積もっていました。実際にはお盆前の応援に入り、9月までの実績が想定より26時間多くなっています。金額にして約2万7千円です。

そこへ10月1日の時給改定が重なりました。この会社では、最低賃金の発効に合わせて時給帯の下にいる28名を48円引き上げ、先輩との逆転を直すために上の12名も20円引き上げています。Bさんは月90時間ほど働きますので、増える額は月4,320円です。

改定が効くのは10月から12月の3か月だけですから、年収としては約1万3千円の増加にとどまります。年間の人件費を試算する側から見れば小さい額です(10月の最低賃金改定で人件費はいくら増えるのか)。ところが本人の残り枠から見ると、実績のブレ2万7千円と合わせて4万円が消えた計算になります。12月に見込んでいた余裕は、ほとんど残っていませんでした。

上限に当たるのは、たくさん働いた人ではありません。年初の見積もりと実績の差が積み上がった人です。この構図は、月45時間超を今年すでに何回使ったかを月中に数える話とよく似ています。

あわせて読みたい時間外の集計が翌月にしか出ないから36協定の上限に気づけない|年720時間と月45時間超の残り回数を、9月末までに勤怠データから月中に出す

「扶養の上限」は、人によって違う額でした

上限額の扱い方

仕組みを作ろうとして最初に止まったのが、上限額をいくつに置くかでした。社内では複数の金額が口伝えで飛び交っていましたが、整理すると次のように分かれます。

上限の種類 年収として数える額 誰が決めた額か
本人の所得税 非課税の通勤手当を含めない額 国の制度が決めた額
配偶者控除・配偶者特別控除 同じく通勤手当を含めない額 国の制度が決めた額
配偶者の健康保険の被扶養者 通勤手当を含めた、これから先の見込みの額 配偶者が加入する保険者が決めた額
配偶者の勤務先の家族手当 支給規程ごとに違う額 配偶者の勤務先が決めた額

同じ人に2つの年収がある、というのがここでの結論です。通勤手当を含めるかどうかで額が動きますので、片方だけを見ていると判断を誤ります。

金額そのものも固定ではありません。所得税の基礎控除は令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等のとおり改正で動きますし、配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額に応じて控除額が段階的に小さくなる仕組みです(国税庁 配偶者特別控除)。一方で家族手当は、少しでも超えると支給が止まる規程もあり、そちらは勤務先である自社からは確かめようがありません。

そのため、システムに制度を判定させることはやめました。従業員マスタに「本人が申告した上限額」と「税と保険のどちらで数えるか」の2項目を持たせ、根拠は本人に置く形にしています。

見込みは、確定・当月・作成中の3つを足しました

年収見込みの出し方は、次の形に落ち着きました。

年収見込み = 確定給与の累計(1月〜前月)
           + 当月の確定シフト × 時給
           + 作成中シフト × 時給
           + 支給が決まっている賞与・手当

税で数えるとき   : 非課税の通勤手当を除きます
保険で数えるとき : 通勤手当を含めます

シフトを組むのは前月20日ごろですから、その時点で前月分の給与は確定しています。確定した実績と、これから入れようとしている予定を同じ画面で足せることが、この仕組みの要点になります。

-- 作成中のシフト案に対して、申告された上限額までの残枠を1人ずつ出します
SELECT
    s.employee_code,
    e.declared_limit_yen                                     AS 申告上限,
    p.fixed_pay_ytd + s.planned_hours * w.hourly_wage        AS 年収見込み,
    e.declared_limit_yen
      - (p.fixed_pay_ytd + s.planned_hours * w.hourly_wage)  AS 残枠
FROM shift_draft s
JOIN employees  e ON e.employee_code = s.employee_code
JOIN payroll_ytd p ON p.employee_code = s.employee_code
JOIN wage_history w ON w.employee_code = s.employee_code
                   AND s.work_date BETWEEN w.valid_from AND w.valid_to
WHERE s.target_month = '2026-12'
ORDER BY 残枠;

時給は1人1値ではなく、適用期間を持った履歴として保持しました。20日締めですので、9月21日から10月20日までの給与には改定前と改定後の単価が混ざります。

シフト表に、残枠の列を1つ足しました

導入までの流れ

翌年1月に着手し、2月に給与ソフトのCSVを毎月取り込むところまで、3月に見込みの計算を作り、4月分のシフトから画面に2列を足しました。開発は6週間です。足したのは「申告上限までの残枠」と「この案で確定した場合の見込み」だけで、シフトの組み方そのものは変えていません。

上限額の申告は、8月に取り直す運用にしました。10月の改定より前に集めておかないと、改定後の時給で計算し直す手間が二度かかるためです。基準日や条件が人ごとに違う数字を台帳側で持つ点は、有休の年5日を期限前に出す場合と同じ考え方になります。

翌年11月の申し出は、4名から1名に減りました。ただし申し出が消えたわけではありません。8月の時点で「12月は週2日に落としたい」という相談が3名から先に出ています。12月の直前ではなく夏のうちに分かったので、採用と教育を10月までに終えられました。スポット採用は3名から0名になり、教育に充てていた延べ18時間は不要になっています。

えらびの道は、業務システムをオーダーメイドで開発しています。卸売の受発注や請求、出張販売の管理、介護のシフト管理などを手がけてきましたので、今回のように給与ソフトはそのまま使い、CSVで取り出した実績とシフトの予定を突き合わせて残枠だけを出す、という作り方にも対応できます。時給を適用期間つきの履歴で持つ部分や、税と保険で年収の数え方を分ける部分など、定義を決めるところから一緒に整理します。データの可視化やレポートの自動化から予測を伴う仕組みまで扱っていますが、まずはシフト表に1列足すような小さい範囲から作り、動かしながら育てる進め方をとっています。

シフトを組む画面に残枠を出すまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXのご支援をしています。卸売の受発注や請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤づくりなどを手がけてきました。実際に手を動かす立場から書いています。

この記事で扱った年収見込みと残枠の表示も、御社の勤怠やシフトに合わせたかたちでお手伝いできます。給与ソフトからのCSV取り込み、確定給与と作成中シフトを足す計算、適用期間つきの時給履歴、税と保険で通勤手当の扱いを分ける定義まで、いまの給与計算はそのまま残して、その先の集計だけを足すかたちも取れます。上限額の申告を受け取る台帳の持ち方も、運用の実情を伺いながら決めます。

進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務から動かし、残りは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、シフトを組む方から伺った例外がそのまま設計に入ります。

まずは、いまのシフト表と給与の実績が別々になっている場所を伺うところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。

よくある質問

扶養の上限額は、会社が従業員の代わりに判定できますか?

税の基準は制度で決まっていますが、健康保険の被扶養者の基準は配偶者が加入する保険者が、家族手当の基準は配偶者の勤務先が決めています。勤務先である自社からは確かめようがありませんので、本人が申告した上限額を預かり、そこまでの残枠だけを出す形が現実的です。

給与ソフトを入れ替えないと、年収見込みは出せませんか?

多くの場合は入れ替えずに済みます。月ごとの支給額をCSVで取り出せれば、累計と見込みの計算は別の仕組みで作れます。入れ替えは給与計算そのものに影響しますので、まずは年の累計と通勤手当の額を分けて取り出せるかどうかを確かめるほうが先になります。

10月に時給が上がると、パートの年収はどのくらい増えますか?

改定が効くのは10月から12月の3か月分ですので、年収の増え方は月あたりの増加額のおよそ3倍にとどまります。金額としては大きくありませんが、上限まで数万円しか残っていない人にとっては、その3か月分が超えるかどうかの分かれ目になります。

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この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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