
10月の最低賃金改定で人件費はいくら増えるのか|Excelの勤怠集計では試算が合わない理由
最低賃金の改定額は夏に各都道府県の答申が出そろい、秋に発効します。この時期に「うちはいくら人件費が増えるのか」を試算する会社は多いです。ただ、Excelの勤怠表と賃金台帳を突き合わせて出した数字は、翌期の決算でほぼ必ず実額とずれます。ずれ方には決まったパターンがあるので、順に見ていきます。
月給者を対象外だと思い込み、事務職の引き上げ漏れが後から見つかる
最低賃金はパート・アルバイトの話だと考え、時給者のシートだけを確認してしまいます。実際には雇用形態を問わず適用され、月給者も「算入対象の賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間」で時給に換算して判定します。月給18万円で年間所定労働時間2,000時間(月平均166.7時間)なら時給換算は1,080円です。この水準は地域によっては改定後の額を下回ります。
Excelでは時給者と月給者が別ファイルで管理され、同じ単位に揃える作業が誰の担当にもなっていないのが原因です。防ぐには、賃金を「支給額」ではなく時給換算できる形で持ちます。月平均所定労働時間を従業員マスタに置いておけば、判定は1本のクエリで済みます。
-- 改定後の最低賃金を下回る従業員を洗い出す
-- base_wage は最低賃金の算入対象のみを合計した額を入れる
SELECT
e.employee_code,
e.branch_id,
e.wage_type,
CASE e.wage_type
WHEN 'hourly' THEN e.base_wage
WHEN 'monthly' THEN ROUND(e.base_wage / e.monthly_standard_hours)
END AS hourly_equivalent,
m.min_wage,
m.effective_from
FROM employees e
JOIN minimum_wages m
ON m.prefecture = e.work_prefecture
AND m.fiscal_year = 2026
WHERE e.status = 'active'
AND CASE e.wage_type
WHEN 'hourly' THEN e.base_wage
WHEN 'monthly' THEN ROUND(e.base_wage / e.monthly_standard_hours)
END < m.min_wage
ORDER BY e.branch_id, hourly_equivalent;
手当を含めた支給額で割ってしまい、「全員クリアしている」と誤判定する
時給換算のときに支給合計を使うと、必ず実態より高く出ます。最低賃金には算入しない賃金が決まっているためです。
| 賃金項目 | 最低賃金への算入 |
|---|---|
| 基本給・職務手当 | 算入します |
| 賞与など1か月を超える期間ごとの支給 | 算入しません |
| 時間外・休日・深夜の割増賃金 | 算入しません |
| 精皆勤手当・通勤手当・家族手当 | 算入しません |
Excelの給与データは「支給合計」の1列で持たれていることが多く、項目ごとの算入可否フラグがありません。結果として毎年、担当者が記憶を頼りに列を選び直しています。給与項目マスタに算入可否の属性を1つ足すだけで、この判断は翌年以降も自動で効きます。
時給の差額×労働時間で止まり、割増賃金と社会保険料の連動を落とす
最も金額が動くのがここです。時給が上がれば時間外1.25倍・深夜0.25加算・法定休日1.35倍がすべて連動し、社会保険の加入者であれば事業主負担が概ね15%前後乗ります。パート20人・時給を60円引き上げ・1人あたり月120時間の所定労働で試算すると、次のようになります。
| 内訳 | 単純な試算 | 実際に増える額(月・概算) |
|---|---|---|
| 所定内賃金(60円 × 120時間 × 20人) | 144,000円 | 144,000円 |
| 時間外の割増(合計300時間 × 1.25) | ― | 22,500円 |
| 深夜の割増(合計240時間 × 0.25) | ― | 3,600円 |
| 賃金の逆転を直す分(上位10人 × 40円) | ― | 48,000円 |
| 社会保険料の事業主負担(約15%) | ― | 32,700円 |
| 合計 | 144,000円 | 250,800円 |
単純試算のおよそ1.7倍、年額では約173万円と約300万円の差になります。防ぐには、総労働時間ではなく割増区分ごとの実績時間を持った状態で計算します。直近12か月の勤怠実績があれば、この形に落とせます。
-- 改定前後の差額を、割増区分ごとの実績時間に当てて再計算する
SELECT
a.branch_id,
SUM(a.regular_hours * d.wage_diff) AS 所定内,
SUM(a.overtime_hours * d.wage_diff * 1.25) AS 時間外,
SUM(a.midnight_hours * d.wage_diff * 0.25) AS 深夜割増,
SUM(a.holiday_hours * d.wage_diff * 1.35) AS 法定休日
FROM attendance_monthly a
JOIN wage_diff d ON d.employee_code = a.employee_code
WHERE a.year_month BETWEEN '2025-09' AND '2026-08'
GROUP BY a.branch_id;
拠点ごとに発効日も金額も違うのに、10月一律で計算する
地域別最低賃金は都道府県ごとに額が異なり、発効日も一律ではありません。2025年度の改定では引き上げ額が大きかったこともあり、発効日が10月から翌年3月まで県によって分かれました。「10月から全社で新しい時給」という前提で組んだ予算は、この時点で崩れます。
Excelの勤怠表は拠点別・月別にファイルが分かれ、従業員コードの採番ルールも拠点で揃っていないことが多いです。同じ人が2拠点で働いていれば、二重計上か計上漏れのどちらかが起きます。都道府県別の最低賃金額と発効日をマスタとして持ち、従業員の勤務地に紐づけておけば、更新は年1回で済みます。
引き上げで先輩と新人の時給が並び、10月以降に人が抜ける
改定は下限を押し上げるだけでなく、その少し上の層を圧縮します。時給1,120円の3年目と1,100円で入ったばかりの人が、改定後は揃って同じ額になります。経験の差が賃金に出なくなり、秋から冬にかけて静かに離職が出ます。
これを「賃金制度の話であって勤怠集計とは別」と切り分けてしまうのが原因です。実務では逆転を直すための上位層の引き上げが、改定コスト全体のなかで無視できない割合を占めます。防ぐには、判定と同時に時給の分布を出します。1,100〜1,300円の帯に何人いるかを50円刻みで並べれば、引き上げがどこまで波及するかは一目で分かります。Excelでもヒストグラムは作れますが、拠点・雇用形態・勤続年数で切り替えながら見るには手作業が多すぎます。
えらびの道は業務システムをオーダーメイドで開発しており、卸売の受発注・請求、出張販売の管理、介護のシフト管理、ECサイトなどの実績があります。最低賃金の試算まわりでいえば、勤怠と賃金台帳を従業員コードで突き合わせる仕組み、都道府県別の最低賃金・発効日マスタ、割増区分ごとの実績時間から増額を出す試算表の自動生成あたりが具体的に手伝える範囲になります。データの可視化やレポートの自動化から、実績にもとづく人件費の予測、リアルタイムなデータ収集基盤まで扱っています。進め方としては、まず1拠点・直近1年分のデータで試算表を作り、動かしながら対象を広げていく形をとっています。
人件費の試算を実額に近づけるために、えらびの道でお手伝いできること
合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXのご支援をしています。卸売の受発注や請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤づくりなどを手がけてきました。実際に手を動かして作る立場から、現場で起きていることをお伝えしています。
この記事で扱った最低賃金改定の人件費試算についても、御社の実情に合わせたかたちでお手伝いできます。月給者を含めた時給換算の判定、給与項目ごとに算入可否を持たせた賃金マスタの整備、割増区分ごとの実績時間を残す勤怠集計まで、いまの給与計算のやり方に合わせて作ります。給与ソフトはそのまま使い、その手前のデータの持ち方だけを整えるかたちも取れます。
進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務から動かし、残りは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、現場で伺った話がそのまま設計に入ります。
まずは、御社の勤怠と賃金のデータがいまどんな形で残っているかを伺うところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。
よくある質問
最低賃金の改定額と発効日はいつ分かりますか?
各都道府県の答申が夏に出そろい、秋以降に発効します。ただし発効日は全国一律ではなく、2025年度の改定では10月から翌年3月まで県によって分かれました。自社の事業所がある都道府県の額と発効日は、管轄の労働局に確認してください。
月平均所定労働時間はどうやって出せばいいですか?
就業規則や年間カレンダーから年間の所定労働時間を出し、12で割ります。記事の例では年間2,000時間で月平均166.7時間です。事業所や雇用形態でカレンダーが違う場合は、全社で1つの数字にまとめず個別に計算してください。
時給が改定後の最低賃金を下回っていた場合はどうすればいいですか?
まず対象者を洗い出し、発効日までに引き上げる形で対応します。判定に含める賃金の範囲や、遡っての取り扱いが必要かどうかは会社ごとに事情が異なります。自己判断で処理せず、管轄の労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。
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