新システムへのデータ移行費が見積もりで一番膨らむ理由|過去データをどこまで持っていくかの判断基準

データ移行システム刷新業務システム

この記事の事例は、実際にいただくご相談をもとにした想定ケースです。特定の企業を指すものではありません。

見積書の「データ移行一式 120万円」が、340万円になった

食品卸のA社(従業員48名、年商11億円)は、2010年から使っている受発注システムを入れ替えることにしました。開発元の保守が2027年3月で終わるためです。

3社から見積もりを取り、比較しました。開発費はどこも1,400万〜1,800万円で、そこまで大きな差はありませんでした。差がついたのは「データ移行一式」の行でした。B社は120万円、C社は「要件確定後に算出」と書いてあり、D社は380万円と出していました。

A社はB社を選びました。開発が始まって3か月後、B社から連絡が来ます。「移行対象を精査したところ、追加で220万円かかります」。合計340万円です。最初にD社が出していた金額とほぼ同じでした。

何が起きていたのでしょうか。B社の120万円は「現行システムのマスタ(得意先・商品・単価)を新システムに入れる」費用でした。A社が想定していたのは「今まで使ってきたデータが全部そのまま見られる」ことでした。この2つは、見積書の同じ1行に見えて、作業量が3倍違います。

移行費が膨らむのは、量ではなく「形が変わった回数」

過去の仕様変更と移行作業

データ移行を「レコード件数×単価」だと思っていると、見積もりは必ず外れます。A社の受注データは15年分で約84万件ありましたが、費用を押し上げたのはこの件数ではありませんでした。

調べると、A社のデータは途中で3回、形が変わっていました。

時期 何が変わったか 移行時に必要な作業
2010〜2014年 得意先コードが5桁でした 6桁への変換表を作ります(旧コード重複あり)
2015年 商品マスタを一度作り直し、旧コードは廃番扱いにしました 廃番コードと現行コードの紐付けが未整備です
2019年10月 軽減税率対応で税区分カラムを追加しました それ以前のデータは税区分が空欄です
2023年 得意先ごとの単価表をExcel管理に分離しました システム外にあり、移行対象として認識されていませんでした

このうち、B社が最初に見積もっていたのは「現在の形のデータをそのまま移す」作業だけでした。追加の220万円は、過去3回分の形の違いを吸収する変換ロジックの開発費です。

移行費が膨らむ会社には共通点があります。システムを長く使っている会社ほど、途中でルールを変えています。そしてその変更履歴は、たいてい誰の頭の中にもありません。開発会社を変えたいのにソースコードも仕様書も手元にない状況だと、この調査自体に人日がかかります。

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「全部持っていく」をやめて、3つの層に分けた

移行範囲を絞った効果

A社は追加費用の連絡を受けて、移行範囲を作り直すことにしました。決め方はシンプルで、「そのデータを、誰が、どういう場面で使うか」を1つずつ書き出しました。

出てきた答えは3層に分かれました。

第1層:新システムで日常的に使う(変換して移行) 得意先マスタ、商品マスタ、単価表、直近2年分の受注・出荷・請求データです。これは形を揃えて移す必要があります。A社の場合、直近2年に絞ると受注データは11万件になりました。

第2層:たまに参照するが、更新はしない(別の場所に置く) 2〜7年前の受注・請求データです。年に数回、過去の取引条件を確認するために見ます。これは新システムに入れず、CSVで書き出して検索できる形で別に保管しました。電子帳簿保存法の検索要件は満たす必要がありますが、それは業務システム本体でなくても構わないのです。

第3層:法定保存期間を過ぎている(移行しない) 7年より前のデータです。帳簿書類の保存期間を過ぎており、実務でも参照実績がありませんでした。ログを調べたところ、過去2年間で10年以上前のデータを開いた記録は4件でした。

この整理で、移行対象は84万件から11万件になりました。追加費用220万円は、60万円まで下がりました。差の160万円は、2019年以前の税区分変換と、2014年以前のコード変換をやめた分です。合わせて最終的な移行費は180万円、当初想定の340万円から160万円減りました。

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「何年分残すか」を会議で決めない方法

参照実績で保持年数を決める

移行範囲の会議は、たいてい紛糾します。営業部長は「10年前の取引も見たい」と言い、経理は「7年あればいい」と言います。両方の言い分は正しく、議論では決まりません。

A社がやったのは、現行システムの参照ログを取り出すことでした。「いつ、誰が、何年前のデータを開いたか」を実データで出します。感覚の議論を、件数の議論に変えます。

-- 現行システムから、参照実績を年次で集計する
SELECT
  YEAR(o.order_date)          AS データ年,
  COUNT(DISTINCT l.log_id)    AS 参照回数,
  COUNT(DISTINCT l.user_id)   AS 参照した人数,
  MAX(l.accessed_at)          AS 最後に見られた日
FROM access_log l
JOIN orders o ON l.record_id = o.order_id
WHERE l.accessed_at >= '2024-08-01'   -- 直近2年
GROUP BY YEAR(o.order_date)
ORDER BY データ年 DESC;

A社ではこの結果を1枚の表にして会議に出しました。5年前より古いデータの参照は全体の1.8%、そのうち8割が経理の年次確認でした。営業部長が言っていた「10年前の取引」は、実際には過去2年で1件も開かれていませんでした。

参照ログが残っていないシステムもあります。その場合は、過去1年で「古い伝票を探してほしい」と依頼された件数を、担当者に数えてもらいます。正確でなくて構いません。桁が分かれば判断はできます。

見積もりを取る側が、先に書いておくべきこと

見積もり依頼時に渡す項目

A社の反省は「移行の要件を書かずに見積もりを頼んだ」ことでした。次からは、見積もり依頼の時点で以下を渡すことにしました。

項目 書く内容 A社の例
移行対象テーブル 名前と件数 得意先/商品/受注/出荷/請求の5種、計11万件
保持期間 何年分を新システムに入れるか 直近2年(それ以前はCSV保管)
過去の仕様変更 いつ何を変えたか 2014年コード桁数、2015年商品マスタ、2019年税区分
名寄せの要否 重複データを統合するか 得意先の重複12件を統合、商品は現状のまま
検証方法 移行後、何をもって完了とするか 直近12か月の請求金額が現行と一致すること
移行リハーサル 何回やるか 本番前に2回

特に効くのは最後の2行です。移行は「入れて終わり」ではなく、「入れたものが合っているか確かめる」までが作業になります。A社は請求金額の突合で3回目に不一致を見つけ、値引きの端数処理が旧システムと違うことに気づきました。この確認を省くと、稼働後に請求書の金額が変わり、得意先からの問い合わせで発覚します。

そして移行リハーサルは、稼働日を決める前に工数へ入れておきます。稼働時期から逆算すると着手が想像より早いのは、この検証期間が後ろに乗るからでもあります。

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導入時に、どこを手伝えるか

えらびの道では、卸売の受発注・請求、出張販売の管理、介護のシフト管理、ECサイトなどをオーダーメイドで開発しています。データ移行については、現行システムからの抽出、過去の仕様変更を吸収する変換処理の作成、移行後の突合チェックまでを一続きで扱います。第2層のように「新システムには入れないが検索はできる状態で残す」置き場を作ることもあります。

進め方としては、まず参照実績の集計や現行データの棚卸しといった小さい範囲から着手して、移行範囲を数字で決めてから本体の設計に入ることが多いです。データの可視化やレポートの自動化、機械学習による予測やリアルタイムなデータ収集基盤も扱っているので、移行後に「過去データをどう見せるか」まで含めて相談してもらえます。

移行するデータの線引きまで、えらびの道でお手伝いできること

合同会社えらびの道は、中小企業向けのシステム受託開発と、データ活用・DXのご支援をしています。卸売の受発注や請求、介護のシフト管理、出張販売の管理、EC・決済、業務データを集めて予測に使う基盤づくりなどを手がけてきました。実際に古いシステムからデータを移す側に立っているので、見積書の1行の裏で何が起きるかをお伝えしています。

この記事で扱った移行範囲の線引きについても、御社のデータに合わせたかたちでお手伝いできます。受発注や請求のデータが過去にどこで形を変えてきたかの洗い出し、日常的に使う分と参照するだけの分の切り分け、参照用のデータを新システムの外で検索できるようにする仕組みまで、実際のレコードを見ながら一緒に決めていきます。

進め方としては、全部を一度に置き換えることはしません。止まると困る1業務から動かし、残りのデータは様子を見ながら移していきます。打ち合わせから開発まで同じ人間が担当しますので、移行費の見積の根拠を同じ相手に確かめられます。

まずは、御社が過去のどのデータを、どんな場面で見ているかを伺うところからで構いません。えらびの道ではオンラインで30分ほどのご相談をお受けしており、費用はかかりません。

よくある質問

データ移行の費用はどのくらいかかりますか?

システム開発費の1〜2割が目安ですが、過去にコード体系やマスタの作り方を変えている場合は3割近くまで上がります。件数よりも、変換パターンの数で決まります。移行対象を直近数年に絞ると、変換が不要な期間が増えるため費用は大きく下がります。

過去のデータは何年分を新システムに入れるべきですか?

日常的に更新するデータは直近2〜3年、参照だけするデータは新システムに入れずCSVなどで別に保管する分け方が現実的です。判断は感覚ではなく、現行システムの参照ログや「古い伝票を探した回数」で決めると社内の合意が取りやすくなります。

移行が終わったことは、どうやって確認すればいいですか?

件数の一致だけでは不十分で、金額の突合まで行います。直近12か月の請求金額や在庫金額を新旧で比較し、差額がゼロになることを確認してください。端数処理や値引きの計算方式が旧システムと違うと、ここで初めて差が出ます。本番前に2回はリハーサルを行うのが安全です。

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この記事は、生成AIで下書きを作成し、実務経験にもとづいて内容を確認・編集したうえで公開しています。制度・金額・要件は年度や状況によって変わるため、実際のご判断の前に公式の窓口でご確認ください。

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